倉敷川のヤリタナゴ祭りとカネヒラ祭りとヤンキー祭り
なんとか雨は上がったものの、数日間降り続いた雨で岡山県下の河川は大増水中。
高梁川はかなりの濁流。こんな時は源流を持たない倉敷川で釣るしかなかろう。
予想どうり倉敷川は増水しているものの、ほぼ止水なので釣りやすそうだ。
竿をだすとカネヒラとヤリタナゴが釣れてくる。祭りはまだ開催中だ。
他種が釣りたくなってきたので場所を移動する。バラを釣りたいのでオカメポイントに。
ここではヤリタナゴとカネヒラ以外にタイリクバラタナゴとシロヒレタビラが釣れてくる。
釣りをしていると一人のヤンキーが川岸にやって来た。
ガニ股で川岸を歩き、川岸の草むらに向かってガンを飛ばしている。謎の行動。
年齢は二十歳前後。顔と背格好はジミー大西に似ている。まさしく倉敷のジミーだ。
直感でやばいと思った。刺激しないようにこっそりと釣りを続ける。
足音が聞こえた。振り返るとジミー倉敷がいた。私の周りの草むらにガンを飛ばしている。
怖いと思った。が、意を決して話しかけてみる。「何をお探しなんですか?」
ジミー倉敷は草むらから視線を私に向け、無言のままガンを飛ばしてくる。
時間にして10秒ほど二人は無言のまま見つめ合うこことなった。
次の瞬間、ジミー倉敷は無言のまま離れた草むらの方へガニ股で歩いていった。
体中から汗が噴き出す。殺されるかと思った。やはり倉敷のヤンキーは怖い。
なんといっても伝説のヤンキー辰吉丈一郎を排出した街だから余計だ。
しかしながら、ヤンキーが草むらで昆虫でも探していたのだろうか?
昔読んだ伝記のファーブルさんとは雰囲気が全然違う。謎は深まるばかりだ。
震える手で竿を持ち釣りを続ける。
数分後、気配を感じたので背後を振り返った。
そこにはジミー倉敷がガニ股で立っていた。殺しにきた。間違いない。
数メートル先から私にガンを飛ばしてくる。きっと目をそらすと殺される。
私も負けじと彼をじっと見つめてやった。これが功を奏す。
ジミー倉敷は急に私に背を向けると一目散に走り出した。
かなりの前傾姿勢で、ややガニ股で、川沿いの道をひたすらに走る。
私の視界から消えるまで彼は走り続けた。
また一つの命が救われた。急いで帰り支度を整える。
増水中にしてはまずまずの釣果だったような気がするが、あまり記憶にない。
全身汗だくで逃げるように車を走らせる。
時おりバックミラーで背後を確認する。
ジミー倉敷が前傾姿勢でややガニ股で車を追いかけて来ていたら怖いからだ。