芦田川タナゴ釣行記 2020 秋 ~四万十川編~
歩き疲れて空を見上げる。なぜ歩き続けるのか。旅人は言う。そこに観たい景色があるから。
駐車場からかれこれ一キロほど上流へ向かって歩いただろうか。
目指す景色がそこにあった。沈下橋だ。地図で見て以来、ここに来てみたかった。
風情がある。もはやここは四万十川。周りには誰もいない。旅人だけの風景。
比較的殺風景な景色が多い芦田川の河川敷において、この場所だけは別世界だ。
中州が広がり、その中州に架かった古めかしい沈下橋が福山市街地の喧騒を忘れさせる。
釣れる釣れないは別問題。もし何も釣れなくても良いじゃないか。ここは四万十川。
静かな清流で竿をだす至福のひととき。タナゴが釣れてくれれば御の字。
癒されながらその時を楽しむ。この沈下橋の周りはやや水の深さがあるようだ。
さらにほぼ止水でシロヒレが好みそうな雰囲気。だがシロヒレは芦田川には居ない。
となると、同じような環境を好む魚が他に居たなあ。そんなことを考えていた。
静寂を切りさくような強烈な引き。竿を上げる。青い悪魔のメスが釣れ上がった。
水中を稲妻が走ったかのような強烈な引き。淡水の暴走族のオスが釣れてくる。
そうですか。彼らが好きそうな環境ですもんね。
どうやら沈下橋からの釣りではブルーが多く釣れるらしい。
ふと、この沈下橋には歴史があるのかと考えた。調べてみる。フゥクぺディアによると。
芦田川の中州に掛かる橋の歴史。江戸時代に大雨で彦兵衛の嫡男彦太郎が中州に流された。
救助のため彦兵衛は私財を投げ打ち、中州まで橋を架けた。難工事の末、半年後に完成。
中州に救助に向かったものの彦太郎は飢えのため息を引き取っていたという。
時代は流れ、昭和時代。戦後、福山河川総合育成会が地域振興のため橋を建設した。
名称は「福山不良少年少女恋の軟派橋」。しかし交通の便の悪さから利用者は減少。
中州に死体を埋めに来る者しか利用しなくなってしまったため昭和62年閉鎖。
現在はブルーギル釣りのスポットとして賑わう。現在の愛称は「ブルーブリッジ」。
ですって。事前にフゥクぺディアを見るべきだった。ブルー釣りのメッカだった。
仕方ないから橋の周辺で魚影を探す。すぐそばのなだらかな岸壁に魚影を発見。
さっそく竿をだしてみる。なだらかなので水深は浅い。タナをかなり浅めに調整。
アタリは頻繁にある。どうやら外道が多いらしい。連続で外道が釣れる。
平べったい魚影に向かって餌を落としていると、大きなカネヒラがあがってきた。
今までの芦田川のどのポイントよりも大きめの個体が多い。
釣れたタナゴは全てカネヒラだった。大きめの個体ばかりで楽しめた。
この芦田川西岸はかなりポテンシャルが高い。
岡山県の河川や水路と違い、ヤリやボテの底上げがない分、数釣りには向かない。
しかしカネヒラに限っては相当数生息していると思われる。
この「四万十川ポイント」はデカヒラの里だった。
場所の雰囲気といい、デカヒラといい、とても気に入った。
また近いうちに訪れてみたいと思う。